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原子力とキリスト教3

現在、日本キリスト教における原発問題を論じた文献でもっとも、詳細かつ立場が明確なものは、次に紹介する文献である(実は、ほかのブログで、一度紹介したことがあるのだが)。

日本カトリック司教協議会『今こそ原発の廃止を』編纂委員会
『今こそ原発の廃止を──日本のカトリック教会の問いかけ』
カトリック中央協議会、2016年10月。

いますぐ原発の廃止を~福島第一原発事故という悲劇的な災害を前にして~


本書について

第1部 核開発から福島原発事故──歴史的・社会的問題
第1章 核エネルギー(原子力)の利用と被爆の歴史
   1 原子爆弾と被爆・被曝
   2 日本における原子力発電の歴史
   3 原発および関連施設の巨大事故
   4 労働者の被曝
第2章 福島第一原発事故と人間
   1 福島第一原発事故
   2 痛みと苦しみ──原発災害の社会・心理的被害
   3 嘆きと怒り──原発の構造的非人道性
   4 権利と救済──「人間の復興」への道すじ
第1部補足解説
さよなら原発5万人集会・武藤類子さんのスピーチ

第2部 核エネルギー、原子力発電の科学技術的性格
第1章 放射線、核エネルギー、原子力発電
   1 原子核の内部構造と放射線
   2 原子炉と原子力発電
   3 低線量被曝の健康影響
第2章 原子力発電の問題点
   1 原子力発電所の特殊性
   2 過酷事故の性格
   3 災害と防災
   4 核廃棄物の処理
   5 原子力発電のコスト
第3章 福島第一原発事故──圧倒的な災害
   1 福島第一原発で何が起こったか
   2 福島第一原発で何が起こりえたか
第2部補足解説

第3部 脱原発の思想とキリスト教
第1章 核エネルギー利用についての倫理
   1 聖書にみる環境倫理の基礎
   2 キリスト教の伝統における被造物と人間
   3 核エネルギーの登場と人間
   4 現代環境倫理の視点
   5 回勅『ラウダート・シ』
   6 核エネルギーについてのキリスト教的倫理
第2章 他教会・他宗教の視点と取り組み
   1 脱原発先進国の視点
   2 原発問題に取り組む他の司教団
   3 教皇庁の原発問題に対する立場
   4 他教派・他宗教の脱原発動向
第3章 自然エネルギーの可能性
   1 再生可能エネルギーへの転換
   2 地球温暖化防止への取り組み
   3 電気エネルギー依存を減らす
第3部補足解説

結論

参考文献
対話への道筋を求めて
あとがき
索引

 言うまでもなく、この日本カトリック司教協議会が編集した本文献は、3・11に伴う福島原発事故以降の議論の蓄積を前提としたものであるが、同時に、2016年に邦訳された、教皇フランシスコの回勅「ラウダート・シ」に具体化された環境神学の精神に基づいたものである。特に、この環境思想・神学というげき議論は、第3部で展開されたものであるが(第3部は本書の中心である)、それに先立つ第1部の日本と世界の原子力問題の展開の歴史(なぜ福島原発事故に至ったのか)と第2部の原子力とは科学的技術的にどのようなものなのかの説明(福島原発事故の概要を含む)とが、第3部の議論の事実的な側面を支えており、思想・神学という仕方で提起された議論は説得的なものとなっている。その点で、やや感情的短絡的な反原子力の議論とは水準が違いと言える。問題は、第1部第2部と第3部を繋ぐ議論が欠けている点にあると思われる。
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プロフィール

LogosOffice2

Author:LogosOffice2
本ブログでは、2016年度から(18年度まで)開始の科学研究費による研究「拡張された自然神学の具体化としての「科学技術の神学」─東アジアの文脈で─」に関連した情報を掲載してきましたが、今回、その内容を現代キリスト教思想に関わるものに変更することになり、ブログ・タイトルを「現代キリスト教思想の諸問題」に変更することにしました。しばらくは、具体的な掲載内容をめぐり方向を探りたいと思いますが、徐々に本格化させてゆきます。

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