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生活保護の現実(2015/3/8の記事)

現代の日本では、近代の人権概念が十分に定着する前に空洞化するという事態が進行している。人権概念が空洞化して、日本はなおも近代国家たりうるのか。今回、取り上げたいのは、生活保護とは、上(政府、金持ち)からの恩恵ではなく、人権の不可欠の一部であるという点である。生活保護という制度の問題点や運用上の問題は、それ自体問うべきではあるが、それは生活保護が人権として尊重されるべきであることを論駁するものではない。運用上の不適切事例をもってその存在意味自体が否定できると考える人は、学校でもう一度論理的思考方法を学び直すべきである(あるいはそれは詭弁である)。
 しかし、この詭弁がまかり通っているのが、現代日本の寒い現実である(だから、現代日本は欧米のスタンダードにおける近代国家であるかが怪しいということになるわけである)。

 こうした実情を知る上で、注目すべきは、「大阪」であり、次の文献はきわめて有用である。

大阪市生活保護行政問題全国調査団編
『大阪市の生活保護で、いま、なにが起きているのか 情報公開と集団交渉で行政を変える!』
かもがわ出版、2014年。

はじめに
調査団がやってきたこと

第1章 大阪市の生活保護でいま、なにが起きているのか
 1 はじめに
 2 大阪市生活保護行政の問題点
 3 まとめ
  調査団に参加して(1) 胸が熱くなった怒濤の調査活動 (雨宮処凛)

第2章 大阪市の生活保護行政の問題点
 part 1 入り口で締め出す~「申請時の助言ガイドライン」「連絡票」で「水際作戦」のシステム化~
  調査団に参加して(2) 突然の扶養照会に、戸惑いと怒り (城世津子)
 part 2 親族に圧力をかける~「仕送り額のめやす」と一律の扶養照会~
  調査団に参加して(3) 想像のはるか「斜め上」だった大阪市の現状 (みわよしこ)
 part 3 自己負担と強要する~介護扶助自己負担問題~
  調査団に参加して(4) 根拠もなく、弱い立場の人からお金をとる (浜まき代)
  調査団に参加して(5) 「他人事」の厚労省、国家で追及 (辰巳孝太郎)
 part 4 「不正受給」のレッテルを貼る~警察官OBの活用と不正受給キャンペーン~
  調査団に参加して(6) 北九州から参加して (高木健康)
 part 5 職員をふやさない、育てない~ケースワーカーの人員と専門性の不足~
  調査団に参加して(7) 本来の「ケースワーク」を放棄した大阪市 (生田武志)
 part 6 生活困窮者も職員も監視して締め上げる~職員基本条例と警察との連携強化~
  調査団に参加して(8) ずさんな大阪市の業務が浮き彫りに (井上賢二)

第3章 どう調査をすすめたか
 私たちは全国調査にどう取り組んだのか
 役所の内部で起きていることを知るために~情報公開・公文書開示請求をしてみよう~
 開示資料をどう分析したのか
  
  調査団に参加して(9) 労働組合が生活保護の問題になぜ取り組むのか (米村泰輔)

コラム 大阪市ケースワーカー覆面座談会
おわりに ~全国いたるところで生活保護調査団活動をやりましょう~

 大阪市は大変なことになっている。わたくしも、以前は大阪市に住み、大阪市立大学で教員をしていたが、こんな状況ではなかったはず。 
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劣化する日本を認識するところから(2015/4/14の記事)

 日本における宗教の未来は、日本社会の未来を切り離しては論じられない。では、日本はどこに向かって進もうというのだろうか。
 人口動態は、マクロは社会変動の基礎的な要因であり、少子高齢化から環境まで、あらゆる問題の基盤をなしている。この点から、日本社会の50年後を見ると劇的な変貌が見えてくる。これまでの、そして今の政策がどれほど見当違いを犯しているかについては(少子化対策は、子供の数の半減が予測される中で、何の意味があるのか。25~39歳の女性人口がこの25年で37.1%減少するのは、すでに確定的である)、まったく暗い気分になるばかりである。まさに発想の根本的な転換が求められている。
具体的には、次の文献を参照。

松谷明彦
『東京劣化──地方以上に劇的な首都の人口問題』
PHP新書、2015年3月30日。

はじめに
序章
 国のタブーその1──少子化対策
流れは変えられない/財政が破綻する
 国のタブーその2──経済成長の追求
国民が不幸になる/誰のための政策か
国のタブーその3──増税による財政再建
社会が崩壊する/正しい財政改革とは
 地方のタブーその1──若者の流出抑制
地方は「消滅」しない/人口循環を考えよ
地方のタブーその2──大都市経済への接近
産業再配置は格差を拡大する/近代ものづくり産業を地方へ
地方のタブーその3──市町村合併
集落と農業が破壊される/どうすれば集落と農業を維持できるのか
首都東京劣化
首都東京のスラム化/文化や情報の発信力が弱まる/生活環境の悪化/「中流都市」への劣化

第一章 東京 これからの現実
第二章 東京劣化現象への誤解  
第三章 これからの東京の経済
第四章 なぜ政府は間違えるのか──人口政策の歴史が教えてくれること
第五章 東京劣化への対処 今できること

おわりに

日本の経済政策をどう考えるか(2016/3/5の記事)

 日本の経済政策のあり方は、日本で生活するわたしたちにとっては、重大な関心事である。そして、まさにここに大きな論争があることは言うまでもない。その論争は、来る参議院選挙(衆参同時?)に向けて実質的な深まりのあるものが期待される。こうした展開も念頭に、面白く読んだ本を紹介したい。この本の立場をどう解するか、投票の向けてよく考えるべきであろう。

松尾匡
『この経済政策が民主主義を救う──安倍政権に勝てる対案』
大月書店、2016年。

はじめに

第1章 安倍政権の景気作戦──官邸の思惑は当たるか?
第2章 人々が政治に求めているもの
第3章 どんな経済政策を掲げるべきか
   1 緩和マネーを福祉・医療に使って雇用拡大!
   2 悪性のインフレにはならない
   3 長期金利高騰も国債暴落も起こらない
   4 「歯止め」としてのインフレ目標
   5 なぜプラスのインフレ目標を掲げるか
第4章 躍進する欧米左派の経済政策
第5章 復活ケインズ理論と新しい古典派との闘い
第6章 今野景気政策はどこで行きづまるか
   1 欧米左派の大物論客は何に賛成し何に反対しているか
   2 安倍政権の経済政策の3つの矛盾
   3 その他の批判すべき点
   4 残されたチャンスはいつまでか

むすびにかえて

 ともかくも、まともな論争が必要である。それは本来は国会の役割、そしてマスコミの役割のはずであるが、日本の現状はそれがまともに機能しているとは思えない(理由がどこにあるかはお考えいただきたい)。
 また、本書でも指摘されているように、この欧米の左派は、日本でイメージされている旧来的な「左派」と比べて、理論においても実践においても、大きく進んでいる(アメリカ大統領選挙の迷走ぶりをみよ)。

マイナンバー、大学でも始まる(2016/4/5の記事)

 マイナンバー制度に対する対応は、大学でも着実に進展しつつあります。わたくしも、非常勤で勤務している諸大学でマイナンバーの提出を求められ、すでに提出していますし、本務校での提出も遠からず必要になるものと思います。
 この制度に関しては、経済効果のあるなしを含めて、すでに賛否が存在しますが、まだ、一般に目にできる範囲では、本格的な議論の深まりには至っていない(あるいは至らないようにしている)のが現状ではないかと思います。しかし、この問題は、一方で制度の進展が事実として進行しつつあっても、よく考えるべき問題点を含んでいることも、確かです。
 次の文献は、一つの手掛かりとなるでしょう。

斎藤貴男
『「マイナンバー」が日本を壊す』
集英社インターナショナル。

子どもの貧困(2017/5/28の記事)

 親の世代よりも経済的な豊かさを実現できるかという点で、夢が持ちにくい現代。子どもの貧困が、世界的な規模で深刻化しつつある。これは個人の自助努力の問題ではなく、制度的システム的な欠陥である。

 まずは、アメリカから。次の文献を紹介。
ロバート・D・パットナム 
『われらの子ども──米国における機会格差の拡大』
創元社、2017年。

第一章 アメリカンドリーム──その神話と現実
第二章 家族
第三章 育児
第四章 学校教育
第五章 コミュニティ
第六章 何をすべきか
   1 機会不平等と経済成長
   2 機会不平等と民主主義
   3 機会不平等と道徳的義務
   4 何をすべきか?
   5 機会格差を減らすことはできる
『われらの子ども』のストーリー(ジェニファー・M・シルヴィア、ロバート・D・パットナム)

謝辞
訳者解説
原注
索引

「わが国の歴史の中で、社会経済的格差の拡大によってわれらの経済、われらの民主主義、そしてわれらの価値観が脅かされたのは初めてではない。こういった難題を成功裏に克服して機会の復活を目指すべく現在まで追求されてきた各個別の対応は、具体的にはさまざまに異なっているが、それら全ての根底にあるのは他人の子どもに対する投資への責任感だった。そして、そのような責任感の根底にあるのは、これらの子どももまたわれらの子どもなのだ、という根深い感覚だった。」(290-291)

 この根深い感覚は、民主主義の精神である「集いの意識」に通底するものに思われる。目指されるべき共同体意識とは、こうしたもののはずである。
 この本は、『長周新聞』の紹介記事から知ったものであるが、その後、『長周新聞』(第8044号、2017.5.19)の第二面の次の記事を見付け、このブログで紹介しようと考えた。

「「こどもの日」次世代の育成は?」
「加速する子どもの貧困」「親の非正規化激増と直結」
「沖縄の現実は日本の縮図」「国際的比較でも最悪の水準」「パート掛持ち保育10時間超」

「「一人親世帯の貧困率の国際比較」」「日本は五八・七%でOECD加盟三〇カ国(当時)中の最悪国」
「「沖縄振興費」が米軍基地対策や産業基盤整備に使われ、沖縄県民の生活向上・社会福祉をないがしろにしてきた証しである。」

国際比較での日本の位置は、さまざまな指標で、かなり以前から先進国とは言えない水準にある。
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Author:LogosOffice2
本ブログでは、2016年度から(18年度まで)開始の科学研究費による研究「拡張された自然神学の具体化としての「科学技術の神学」─東アジアの文脈で─」に関連した情報を掲載してきましたが、今回、その内容を現代キリスト教思想に関わるものに変更することになり、ブログ・タイトルを「現代キリスト教思想の諸問題」に変更することにしました。しばらくは、具体的な掲載内容をめぐり方向を探りたいと思いますが、徐々に本格化させてゆきます。

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